【 阻力療法 】

阻力療法ってなに・・・

 

鍼灸治療の中で「阻力鍼法」という手法があります。例えば、ボールを投げようとして腕を上げたときに肩に痛みが出るときは、実際に投げるように腕を上げて痛みや不快感がでる直前の姿勢や格好をしてもらい、その姿勢のまま痛い所に鍼を打つ。様々な動作時痛やスポーツ障害などでは効果の高い治療法のひとつです。

 


  1、ベットの上での治療では・・・?  

 例えば、ボールを投げるとき、腕を上げると肩に痛みが出る場合。ベットの上にうつ伏せ或いは仰向けの状態で、腕や肩がだらんと力が入っていない状態で治療しても効果が上がらない場合が多々あります。

 

ベットの上にうつ伏せ或いは仰向けの状態で、腕がだらんとして肩周りの筋肉がゆるんだ状態と、実際にボールを投げようとして腕を振り上げた状態とでは、肩の筋肉への負荷のかかり方が変わってくるからです。

 

 

2、阻力療法は、鍼治療だけとは限らない

 

「阻力鍼法」の考え方を他の治療道具にも拡大させたのが「阻力療法」です。阻力テイシン(※1)・阻力灸・阻力マッサージ・阻力吸角など・・・。つまり、痛みを誘発する姿勢で、痛みが出る直前の姿勢で治療を加えていくということになります。当院では、この阻力療法を積極的に行っています。

 

また治療する部位は痛みのある所だけとは限りません。痛む部位との関連を探り、痛みとの関連がある所も治療対象となります。痛む部位と痛みの性質により、治療方法と治療部位を選んでいきます。

 

(※1) テイシン(鍉鍼)は、鍼灸治療の小道具  

 

どのように治療するの・・・?

 

  1、投げるとき肩に痛みがあるときは・・・  

 投げるときに肩に痛みがあるときは、投げる格好で鍼を打つ。 痛みが出る直前の姿勢(阻力姿勢)で動きを止めて、その状態で治療を進めていきます。痛みが出る直前の姿勢で、痛みを誘発する姿勢で、痛む部位にかかる負荷を再現した状態で治療を進めていく。術者と患者さんが痛む部位・姿勢を供に探りながら協力して治療を進めていきます。

 

痛みの核そのものに鍼を打ち、痛みそのものを抜き出す。或いは肩の痛みであれば、手などの末端方向に鍼を打ち、響きを引いていき、患部に気を馴染ませて痛みを緩和させていく。

 

  2、ときに使用している道具を持った状態で治療する  

阻力療法は痛みが出るときの姿勢や・格好など、実際に近い状態で治療するというものです。ラケット持ってボールを打つとき肘の外側が痛いとき、何も握らずラケットを握る手の形をしても、それはラケットを握る手の形をしただけ。

 

ラケットを握ったときの手の中のグリップの質感やラケットの重量感、小指や薬指の締まった感じや親指や人差し指の少し浮いた感じなどは、実際にラケットを握った状態で治療することが一番いいと考えています。実際に即した状況で治療するのが一番いいと感じるからです。

 

  3、身体の使い方に無理や改善点はないか  

スポーツでの障害は、フォーム、使用している用具、練習場所、練習の仕方、その人の素因などの複合要素が絡みあって痛みや怪我となったものです。ですからその中から痛みだけを取り出して治療するだけではまた再発するばかりです。

 

フォームや力の入れ方、使っている道具、呼吸の仕方などに問題はないだろうか?特に身体の使い方や身体意識の持ち方などの検討と治療を併用させていきます。 またその動作に不必要な力を何処かに入れていないだろうか。力の入れ方の誤りより、力の抜き方の誤りから不必要な力が身体の何処かに入ってはいないだろうか。アクセルを踏みながらブレーキを踏んでいるような、動作を相殺してしまうような不必要な力が身体の何処かに入ってはいないだろうか。その不必要な力みが動作全体のバランスを壊し、痛みやケガなどにつながらないよう注視しています。

 

  4、阻力瀉法(※2)  

階段の昇り降りや山登りなどで、急に膝が痛くなった場合などの急に起きた痛みには、鍼よりテイシンなどで行き場を失った気を抜く方がよい場合が多々あります。

 

急に起きた痛みには、瀉法と言われる手法がよい場合が多く、これは全ての急に起きた痛みについて言えることです。スポーツ障害の場合、この阻力瀉法と阻力療法を併用させることはメリットが多いと感じています。

 

(※2) 瀉法は、余分な気を取り除くという鍼灸用語