【 鍼治療 】

鍼治療ってどんなものなのだろう~

 

日本での鍼治療の歴史は古く、千年以上の歴史があります。現在行われている治療方法の中では、最も古い治療方法の一つです。鍼治療には、正経治療・奇経治療・経筋治療・阻力療法など様々な治療スタイルがあります。

 


 

1、日本の鍼灸

 

大陸から鍼治療がもたらされたのは、飛鳥時代かそれ以前のことと考えられています。701年に制定された「大宝律令」という法典集には、鍼博士・鍼師・鍼生という職名があるそうですから、鍼灸の伝来は明らかにそれ以前と考えられます。以来千年以上の長きに渡り、日本人の間で脈々と受け継がれてきました。

 

江戸時代に日本人によって鍼管(※1)が考え出されたことにより、細く繊細な鍼を使うことが可能となりました。押手(※2)を造り、鍼管を据えて鍼を打つ、日本独自のスタイルが出来上がりました。このことは日本の鍼灸の大きな特徴となっていきます。

 

(※1) 鍼を打つときに支え持つ管

(※2) 鍼を支え持つ手のこと

 

 

2、「不通即痛 通即不痛」と「虚実補瀉

 

鍼治療の基本となる考え方は、「不通即痛 通即不痛」。この意味するところは、「どうして痛みが起こるのだろうか~それは気が流れ通じていないから痛みが出るのだ~気が流れ通じたならば痛みは癒える・・・」という意味合いです。

 

つまり身体を流れる気の流れに詰まりや流れの良くないところができるから、痛みや不都合が生じると考えています。気の流れの詰まりや阻滞を取り除くために、要所要所に鍼を打ち速やかな気の流れの回復を図ろうとするのが鍼治療です。

 

「虚実補瀉」は、気の流れに不足があればそれを補い、気が集まりすぎて流れに詰まりができるようであれば、それを取り除き流れを回復するということです。身体本来の気の流れを回復していくのが鍼治療です。

 

 

3、五臓六腑を調えていく

 

鍼灸では気の流れるルートを経脈といい、その経脈の要所要所にあり、歴史的な経験則から病変を起こしやすい部位を経穴(ツボ)と呼んでいます。

 

経脈には、肺経・大腸経・胃経・脾経・・・というふうに五臓六腑の名称をつけています。五臓六腑の名称が付けられた経脈は、全てで十二本あります。これに体幹前面を巡る任脈と体幹後面を巡る督脈の二本を加えた十四の経脈をもって通常は治療に当たっています。これらの経脈は、内臓と深い繋がりがあると考えられています。鍼灸は、体表上のツボを通じた治療をすることから、筋・骨格系の治療法と思われがちですが、実は五臓六腑を調えていくことを主眼とした内臓系の治療法です。

 

心身一元論の立場に立ち、怒る・喜ぶ・思い煩う・憂慮する・恐れるなどの様々な情動も、五臓六腑の心象現象と考えています。心と身体は相互に影響を及ぼしあう関係にあります。抑揚のバランスのとれた精神の均衡は、五臓六腑の調和によってもたらされると考えています。

 

鍼治療の実際はどのようなもの?

 

これはいま現在の当院の考え方です。

 

1、鍼は、浅いことが多い

 

腰臀部を除いて、多くの場合、皮膚から筋肉の上までの範囲で数ミリ程度の刺入となることが多いです。ですから痛みや不快感も感じないことが多いです。

 

 

2、鍼は、天に向けて立てられた小さなアンテナ

 

鍼を、激しく回さない、揺すらない、上下動させない。当院では微細動(BS)と呼んでいる微かな動きの中で響きを捕らえ同調し、増幅させていくという手法をとっています。激しい鍼の動きは気の所在を探る動きを妨げ、気を散らすと考えています。動かすのは気であって鍼ではないと考えています。優しく穏やかな鍼使いを大切にしています。

 

生きている限り気は流れています。しかし、何かの原因で弱くか細くなった響きを増幅させ、元の響きを回復させていく。鍼の動きが大きくては、内なる内動は掻き消され、感じとれなくなってしまうと感じています。その響きが患部に及ぶとき何らかの変化が生まれてきます。

 

 

3、実際の治療では・・・

 

首・肩・腰・膝などの痛みについも「不通即痛 通即不痛」の原理で、痛むところの気の流れを回復させていくことが鍼治療の目的になります。気がうまく通じていないから痛むのだと考えています。

 

治療すべき部位を一穴づつ丹念に探り鍼を打っていきます。何が・何処がその痛みの原因となったいるかを一緒に探り、その方に適した治療部位を探っていきます。痛みの原因となっている気の流れを阻害している所が必ず何処かにあります。それを一緒になって探していきます。 

 

天を指す石の周りに波打つ響き模様

天地共鳴図